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メタボダイエット

◆メタボリックシンドローム ダイエットへの近道◆

本年4月より、生活習慣病予防のため、メタボリックシンドロームに着目した「特定健康診査」と「特定保健指導」が始まった。しかし、健康診断を受け、専門家から生活指導をされても、「生活習慣」は、「ビジネス習慣」そのものであり、そう簡単には直らない。

そこで、筆者自らが今年の1月末から一念発起して、ダイエットに励んだ結果、5キロ痩せ、標準体重に戻した、そのあたりのノウハウを伝授したい。

いわゆる、身体がなまった中年の生活態度を改めるなかで、筋肉を付けるためのダイエットである。単に痩せるだけではなく、内臓脂肪を取り除き、骨格筋をつける戦略に出た。つまりは、アラジンと魔法のランプ作戦。

筆者も一念発起とは言うものの、3年前から、健康診断の際に記入する問診表を見て、予備軍としての生活改善勧告を医師や病院から受けていた。何がきっかけで、どう変身できるのか。今回は、いつものコラムとは違うトーンで書き綴ってみた。ただし、アプローチはリスクマネジメントである(笑)。

いつものように、日々発生するリスク事象、本コラムでの連載テーマのフォローアップについては、適時筆者のブログ「e戦略の視点2」にて行っている。

復活&準備編
ビジネスとしての健康産業、健康食品産業に踊らされない


厚生労働省や経済産業省、その他財団法人や社団法人、各種業界団体などでは、今回の制度開始をビッグウェーブとみなし、取らぬ狸の皮算用が続いている。

状況は、後期高齢者医療制度問題に似ていなくもない。市町村のそれぞれの特性を鑑みずに、メタボが国民医療費を上げる最大のリスクファクターとみなし、危険因子を持つ患者に対し、企業側が行う努力などが、数値とともに、押し付けられているのが現状だ。

高齢者の場合、家族やメディアを含め、弱者としての声を上げやすいが、ビジネスパーソンは現役のため、それすら出来ないことが考えられる。

また、機能性食品など、ダイエットをうたったものなどには、法改正により、表示方法に厳格なルールが課せられているが、本稿での筆者の考えは、まずはそうしたものに頼らずに、食事療法と運動療法、それに向けた業務プロセスの改善で、意識付けを行うことが効果的であり、安全安心であるというものである。

市場に踊らされず、是々非々での付き合いが最初の一歩となる。

(なお、ダイエットの実践編は、個人差があり、病気などの因子を持つ場合、素人考えでの無謀な実行は身体に負荷を与えすぎるので、医師と相談し、生理的なデータの変化に留意しつつが望ましい)

問題意識

そこで、筆者の体験談である。80年代には流行のエアロビクスで汗を流し、スキーにはまり、クルーズ・ヨットをたしなみ、ジョギングや自転車を日課としていたが、90年代初頭からの激務で、いつしかスキーから遠ざかり、深夜残業、早朝勤務、週末出勤の毎日。さらには、独立し、シンクタンクを経営するなかでのストレスの数々。コンサルティング受託先の無理難題をクリアし、海外出張でのこれ幸いの暴飲暴食。大学院での奉職では、若手指導と称する週末の宴会・・・。

2008年1月の健康診断では、体重も含め、危険水域に達していた。標準といわれる体型が崩壊の危機・・・。

痩せようとは思っていても、現実問題として、いつアクションを取り始めるか。BMI指数(体重を身長で2回割ったもの)などはまだ適正水準の上限にはいるが、むしろ自らの隠れ肥満、内臓脂肪を気にかけたりしていた。そろそろ中高年。このままだと、職業上のストレスも含め、かなりの危険因子であるというのが問題意識であった。

リスク構造の特定

何故に太るのか。まずは、1)食事、2)運動不足、3)運動のための時間不足、4)続けられない意志、5)職務を含めたサプライチェーンと6)利害関係者(特に、スタッフ、学生)らとの距離。

こうしたものを除去していくことが求められる。

筆者の場合、知識は大学院時代に多少かじっていたので、医学的なものが豊富にあったが、知識で持っているのとやるのとでは違う。

理論上は可能であっても、実践していないのであれば、実行可能解とはならない。そのあたりのブレークスルーが重要である。

理論武装

幸い、知識を入れることはさほど苦にならないので、まずは、大型書店を巡り、いろいろ書籍を購入し、インプットから始めた。

必要なものは、「このままこういう生活を続けているとこうなる」という書籍で自らに恐怖感を与えること。糖尿病や痛風、肝臓病などに関する数冊をピックアップ。医師の説教をバーチャルに受けるようなものだ。

次に、食品栄養に関するカロリー計算などの話。管理栄養士向けに細かい数字を扱ったものではなく、80キロカロリーが1単位となるように、写真を使って示し、どのくらいを食すると、1単位分になるかがわかるものだ。これには色々な種類があるが、外食編で、コンビニやファーストフード、一般の定食屋で出している料理の写真があるものを購入しておくと良い。

運動については、ターザンのような月刊誌の4月~5月号に、メタボ特集の記事が出ている。やや、スポーツマン、スポーツウーマン向けの雑誌だが、ファッションから入るのも一計ではある。

こうした知識が入った後、先に掲げた構造化のどこから手をつけるかを決める。

筆者の場合、業務をいじることは困難なので、時間を工夫し、運動を組み込むこと、食事の中で、白いご飯を減らすこと、隠れたカロリーに手を出さないことなどを決めた。

カロリーを意識する

あまり決めすぎると、がんじがらめになるので、長続きはしない。

カロリーは、20~25点=1600~2000キロカロリーを一日分として、ダイエットを心がけると、徐々に体重が低下してくるので、きつくなければ、それを続けることになる。たとえば、ご飯をお茶碗で軽く盛ってしまうと1点である。魚は半分で1点。牛乳はコップ1杯で1点。こうして、一日に20点。万遍なく取るにはどうするかを意識するのだ。

ただし、管理栄養士の仕事ではないので、おおよそで良いし、最初は、1600キロカロリーといえば、暴飲暴食な生活態度に急ブレーキをかけるようなものだから、身体にも負担がかかるし、どだい無理な話。そう考え、自分なりにダイエットし、その方向に向かっていると、意識させることが大事である。

くれぐれも、マニュアルに縛られ、がんじがらめで、出来ない自分に自暴自棄になり、諦めないことである。継続は力なのである。

前掲の食品80キロカロリーのガイドを、暇があるたびに覗いていると、だんだんと、食品が何点かを頭の中で考えるようになり、高カロリーのものに手を出さなくなる。

三種の神器

ダイエットの三種の神器は、万歩計、体重計(内臓脂肪などを量れる体重体組成計)、運動靴である。

万歩計は、3000円ぐらい。加速度計の付いているものであると、カバンや洋服のポケットに入れていても、カウントしてくれる。そして一定速度で歩かないと、カウントしてくれない。

一生懸命歩数を稼いでも、加速度計で図った場合、あまり運動をしていないことがわかる。これはダイエット以外に、筋力を鍛え、歩く速度を早くしないと出てこない効果だ。

実は、筋肉がある程度ついてくると、歩く速さが速くなり、結果、ダイエット効果があがったりする。

2つ目は体重体組成計。

特に内臓脂肪率などの場合、時間帯により少なめに出るし、運動直後にも少なめに出る。これは、体内の水分と抵抗値をもとに内臓脂肪を測定しているからであり、そうした特性を良く理解することが肝要だ。

3つ目は運動靴。少しカッコいい運動靴を用意すると良い。オフィスまでの道のりで、一駅分余分に歩くことが十分に運動になる。運動靴でなくても、底がラバーのもので、ハーフカットのブーツになっているものがある。くるぶしを保護することが大事かもしれない。そうした歩きやすい靴、カッコいい靴で理論武装し、いつでも、どこでもシャカシャカ歩く癖をつけることだ。

実践編

筆者が実践している具体的なメタボ対策は、以下の通り。

・ご飯は半分にする習慣
外食の多い職務であり、昼も夜も外食だ。そのとき、まずは、定食を頼む。頼んだ定食のご飯は少なめと掛け声をすることが望ましい。

そういえば、読んだダイエット書籍では、医師が自らの病気(糖尿病だったと記憶する)の克服のために、定食はおかずごと半分残すことを心がけているようだ。さすがに、筆者はおかずを残すまでの大胆なことは出来ないので、魚中心にして、ご飯類を少なくすることにした。

自宅でも、お茶碗を小さめにし、食欲を満たすためには、ゆっくり食べる。まずは、スープを飲み、野菜を食べ、ご飯は最後に、満腹中枢を満たしてから、少し食べる程度にする(いわゆる、料亭食い、高級旅館食いであり、最後に白いご飯が出てくる、あのやり方の踏襲で、品良く食べるということだ)。

・野菜を食べる習慣
筆者は、かなりの野菜嫌いであったが、数年前に北欧に3カ月ほど滞在し、野菜が好きになった。北欧での高齢者に向けたコミュニケーションの実証実験をしていた頃、ホテル住まいだったせいか、あるいは北欧の野菜が身体に合っていたのか、野菜を食べる習慣ができた。

さて、野菜を食べることをどう習慣化したら良いのだろうか。「言うは易し」だが、例えば、昼にサラダバイキング。あるいは、イタメシ屋のチキンサラダ・ランチなどは、かなりボリュームがあるので、ダイエットしつつ、自らを錯覚させ、ダイエットを続ける意志を身につける最初の一歩となる。筆者は、これを「ツール感」と称し、社会人大学院の授業で、お弟子さんらに伝授している。

・暗示をかける
ダイエットをしていると、ものすごく辛い瞬間が、段階を追って、畳み掛けてくるが、そのときこそが痩せている、脂肪を燃焼している瞬間だと考えればよい。

リバウンドする前に、自らの意志がリバウンドしがちだが、そのときにも、予定は未定と自らに言い聞かせ、もとの軌道に戻す意欲が求められる。

・運動時間の確保
大切なことは、実践するための時間の確保である。ジョギングをするにせよ、スポーツジムに通うにせよ、今の時間をさらに切り詰めるのは、なかなか難しい。

エアロビクス運動(自転車、水泳、ジョギング)が身体に負担がなく、変に筋肉が付かないといわれるが、エアロビクスは、心拍数を120程度に上げた上で(つまりは、軽く息が弾みながら、会話が出来る程度の負荷)で、15分~30分の運動を要する。

30分の運動を確保するには、前後に着替えやシャワーがあるならば、のりしろ含め、60分を確保しなければならないことになる。

これを切り崩すには、どこで余分な時間をカットし、運動に充てるかが問われてくる。

筆者の場合、幸い、マイペースで時間配分が可能、つまりは夜がむちゃくちゃ遅く、深夜勤務が多いため、朝は多少のんびりすることにした。

具体的には、腹筋と腕立て、スクワットなど筋力系で、まずは運動する習慣をつけることにした。例えば、腹筋は、朝起き掛けで、ぼぉーっとしているベッドの上で行う。スクワットは、朝、シャワーの水が温かくなるのを待ちながら実施している(もちろん、心臓への負担であるとか、いろいろ問題はあるのだろうが、今のところ、50回ぐらいを軽くこなす程度では、問題なさそうだ)。

・休日の引きこもり
かなりのダイエットをしていても、休日に、自宅で、うだうだしていると、効果半減である。そこで、食後に少しでも散歩をすると、カロリーを減らせることになる。

コンビニまで雑誌を見に行く、繁華街や百貨店に洋服を買いに行く、大型書店を徘徊する、定点観測と称し、マーケティングの調査に出かけるなどが理由となろう。もちろん、家族サービスや友人知人との様々な集会なども良いきっかけとなろう。

ナイキのフィリップ・ナイト会長ではないが、「ジャスト・ドゥ・イット」である。

林 志行(りん・しこう)
シンクタンク代表

外交官の父と各地を転々。日中英台・4カ国語を操る。大手シンクタンクを経て、2003年1月、国際戦略デザイン研究所を設立。代表取締役に就任。2004年より美ら島沖縄大使。2006年より、東京農工大学大学院教授を兼務。

(出典:日経BPnet )


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